話し方教室(東京)「グローバル・リーダーシップの条件とは?」

宇宙飛行士・若田光一さんのリーダーシップ

数日前に、NHKの夜のニュース番組に、宇宙飛行士・若田光一さんが出演されていた。日本人初の宇宙ステーション船長ということで、「リーダーシップ」について語っていた。

私流に要約するならば、若田さんは「コミュニケーションで信頼関係を築き、それをベースに、リーダーシップを発揮していた」ということになりそうだ。

コミュニケーションが先、その後に、信頼関係

ちなみに、コミュニケーションを教えている人達には、「まず信頼関係が大切です。でないと、コミュニケーションはうまくいきません」と言っている人が多いが、これは間違っている。

なぜなら、出会ってすぐ、信頼関係ができるものではない。信頼関係は、コミュニケーションを重ねていくうちに、ゆっくりと醸成されてくるものだからだ。

だから、信頼関係が先ではない。コミュニケーションが先。コミュニケーションを重ねるうちに、信頼関係が深まっていく、これが真実なのだ。

若田さんのコミュニケーションの取り方

さて、若田さんは宇宙船の中で、他の飛行士たちと、どうやってコミュニケーションをはかっていたのだろうか。

乗組員たちは、日々色んな仕事で忙しい。だから仕事が始まると、そうゆっくりとコミュニケーションの時間がとれるものではない。だから彼は、毎日、夕食を全員でとることに決めていたのだ。

毎日夕食を一緒にとる。そうして彼はメンバーとのコミュニケーションをはかり、信頼関係を醸成していたわけだ。

信頼関係を築く、もう一つのコミュニケーションは議論

そして信頼関係を築く、もう一つのコミュニケーションが実はあった。それは議論だ。

専門家同士の議論では、意見が対立することがよくある。しかも、どちらも譲らないこともしばしばだ。でも最終的には、リーダーは決定をしなければならない。

日本人の多くがやるように、「まあまあ、そうカリカリしないで、ここは私の顔を立てて」などとやったら、信頼をなくしてしまうのが世界標準だ。

そこで若田さんが重視したのは、根拠に基づく意思決定である。

A案とB案で意見が対立する。それを最終的にはリーダーが決定し、チームの決定として推進していくためには、当然、より多くの人が納得する合理的理由、根拠を提示する必要がある。

日本人がグローバル・リーダーになる鍵

私は思うに、食事でコミュニケーションをとる方法は、日本人でも容易にできる。でも、議論の際に「根拠に基づく意思決定」をすることは、多くの日本人にはハードルが高いのではないかと。

でも、心配は要らない。訓練で可能になるから。

欧米では、企業の管理職は根拠に基づく・合理的意思決定の訓練を受けてきている。私も国内企業幹部向けに実施してきたことがある。

だから訓練さえすれば、根拠に基づく意思決定はできるようになることは、わかっている。

グローバルに活躍する日本人が増えてきていることは嬉しいかぎりであるが、まだまだリーダーとして活躍できる人は限られているのが現実。

語学力もさることながら、根拠に基づく議論、根拠に基づく決定ができるかどうか、ここが日本人がグローバル・リーダーになれるかどうかの鍵だと私には思える。

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